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難治性の“がん”は甘いものがお好き!~膵がんへホウ素を使った新たな治療法開発!~

研究のポイント

  • 岡山大学中性子医療研究センターは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT(注1))の研究を行う全学センターです。
  • 予後不良の膵がんに対し、甘い砂糖にホウ素(注2)を付けた薬に効果があることを証明しました。
  • がんには色々な好みがあり、遺伝子を調べてから好みに合わせたホウ素薬剤を作る手法が大事であることを示しました。

概要

岡山大学中性子医療研究センターの道上宏之副センター長?准教授、岡山大学病院低侵襲治療センターの寺石文則講師(消化管外科)、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科?消化器外科学の藤本卓也医員(博士課程大学院生)は、京都大学複合原子力科学研究所の鈴木実教授、近藤夏子助教、近畿大学理工学部応用化学科の北松瑞生准教授、富山大学学術研究部都市デザイン学系の高口豊教授との共同研究で、難治性の膵がんを狙い撃ちするホウ素の薬剤を開発しました。この研究成果はElsevier出版の生物物理学雑誌「Biomaterials」に2024年5月9日にオンライン掲載されました。

用語解説
BNCT(注1)
ホウ素中性子捕捉療法の略。加速器中性子源や原子炉などよりの中性子と、中性子との反応核断面積が大きい原子(ホウ素など)との核反応にて発生する粒子にて、がん細胞選択的に抗腫瘍効果を誘導する原理に基づくがん治療法である。細胞レベルのがん治療法と言われ、ホウ素薬剤が導入された細胞のみを殺傷可能である。
ホウ素(注2)
元素記号Bで表され、原子番号は5、原子量は約10.81。ガラスはホウ素の主要な用途の一つであり、その他、目の洗浄に用いるホウ酸水やホウ酸団子として害虫駆除剤としても古くより使用されてきた。BNCT(中性子捕捉療法)では自然界に約19.9%程度存在するホウ素安定同位体10Bが用いられる。

研究内容の詳細

難治性の“がん”は甘いものがお好き!~膵がんへホウ素を使った新たな治療法開発!~[PDF, 1MB]

論文情報

論文名

BNCT Pancreatic Cancer Treatment Strategy with glucose-conjugated boron drug
(グルコース結合ホウ素薬を用いたBNCTによる膵がん治療戦略)

著者

Takuya Fujimoto, Fuminori Teraishi, Noriyuki Kanehira, Tomoyuki Tajima, Yoshinori Sakurai,
Natsuko Kondo, Masahiro Yamagami, Atsushi Kuwada, Akira Morihara, Mizuki Kitamatsu,
Atsushi Fujimura, Minoru Suzuki, Yutaka Takaguchi, Kunitoshi Shigeyasu, Toshiyoshi
Fujiwara, Hiroyuki Michiue

掲載誌

Biomaterials(バイオマテリアルズ)

DOI

https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2024.122605

お問い合わせ

富山大学学術研究部都市デザイン学系
教授 高口 豊