労働者の問題飲酒 週3回以上飲酒、1回2合以上飲酒、不利な仕事の特性がリスク 日本公務員研究
ポイント
- 1,535名の地方公務員を5年間追跡したところ、男女ともに、週に3回以上飲酒する人や1回に2合以上飲酒する人は、その後に問題飲酒(注1)が発生しやすいことが分かりました。
- 男性では、職位が低い人や交替勤務がある人に、女性では、仕事のパフォーマンスに関する自己評価が低い人に、問題飲酒が発生しやすいことが分かりました。
- リスクの高い人に早期から介入することで、問題飲酒を予防できる可能性があります。
概要
富山大学学術研究部医学系の茂野敬講師、立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループは、労働者の問題飲酒の発生に影響を与える要因を、仕事や家庭生活、社会活動の観点から、追跡調査により明らかにしました。
その結果、男女共に、不適切な飲酒習慣がある人や不利な仕事の特性を持つ人に問題飲酒が多いことが分かりました。このことから、労働者の問題飲酒を予防するためには、節度のある適切な飲酒に関する知識の提供やその周知を目的とした健康教育の実施、定期健康診断時に不利な仕事の特性を持つ労働者の飲酒習慣を把握し、問題飲酒のスクリーニングを行うことで早期からの介入を行うなどの支援的な職場づくりやその改善を図る取り組みが重要であることが示唆されました。
研究成果は、国際誌Industrial Healthに2024年5月15日(水)に掲載されました。
用語解説
(注1)問題飲酒
アルコール依存症およびアルコール乱用や有害な飲酒、アルコールに関連した問題や結果を抱えていること、またはそのような問題のリスクがあること。問題飲酒はCAGEスコアを用いて評価しました。具体的には、「今までに酒をやめるべきだと感じたことはあるか」、「あなたの飲酒が批判されて困ったことはあるか」、「自分の飲酒に関して罪悪感を感じたり悪いと感じたことはあるか」、「朝一番(目が覚めた後)、二日酔いや持続的な気分の悪さから飲酒をしたことがあるか」の4項目のうち、2項目以上該当する場合に問題飲酒と定義しました。
(注2)日本公務員研究(Japanese Civil Servants Study: JACS Study)
イギリスのロンドン大学(Whitehall Ⅱ Study)とフィンランドのヘルシンキ大学(Helsinki Health Survey)との国際共同研究であり、公務員を対象としたストレスと健康に関する悉皆調査。1998年より、5年ごとに4000人規模の調査を実施(今回は第4回目、第5回目の調査を分析)。
研究内容の詳細
労働者の問題飲酒 週3回以上飲酒、1回2合以上飲酒、不利な仕事の特性がリスク 日本公務員研究[PDF, 311KB]
論文情報
論文名
A Longitudinal Study of the Influence of Work Characteristics, Work–family Status, and Social Activities on Problem Drinking: The Japanese Civil Servants Study
著者
Takashi Shigeno, Takashi Tatsuse, Michikazu Sekine, Masaaki Yamada
掲載誌
Industrial Health
DOI
https://doi.org/10.2486/indhealth.2023-0190
お問い合わせ
富山大学学術研究部医学系 成人看護学2講座
講師 茂野敬
- TEL: 076-415-8856
- E-mail:
富山大学学術研究部医学系 疫学?健康政策学講座
助教 立瀬剛志/教授 関根道和
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