世界初!白亜紀バレミアン期の地層から海水魚類の耳石化石を発見!~千葉の大地から探る恐竜時代の魚類化石~
研究のポイント
- 千葉県銚子市から採集され、千葉県立中央博物館に寄贈された銚子層群(※1)の岩石から、海水魚類の耳石(※2)化石を発見しました。
- 耳石化石は5種類に分類され、いずれも東アジアの前期白亜紀の地層から初めて発見された種類です。
- これらの耳石化石は、前期白亜紀の海水魚類の地理的分布や生息年代、古生態について新たな知見をもたらします。
概要
千葉県銚子市に分布する銚子層群(中生代前期白亜紀の浅海成堆積物)から市民によって採集された岩石が千葉県立中央博物館に保管されていました。この岩石について微化石を抽出する手法(※3)を用いて詳しく調査したところ、大きさが5mmに満たない海水魚類の耳石化石を多数発見しました。発見された耳石化石は、いずれの種類も東アジアの前期白亜紀の地層から初めて報告されるもので、海水魚類の分布域や生息年代、古生態などに新たな知見をもたらすものです。
今回の研究の特色として、博物館に寄贈され、収蔵庫に保管されていた岩石から発見されたことが挙げられます。このことは、博物館における保管?研究機能の重要性と市民による自然史標本の収集活動の重要性を改めて示すものです。
この研究成果は、2024年4月発行の国際学術誌「Palaeontologia Electronica」(パラエオントロジカ?エレクトロニカ)において発表されました。
用語解説
(注1)銚子層群
銚子半島の海岸周辺に分布する中生代前期白亜紀の浅い海に堆積した地層の集まりです。銚子層群は、下位(より古い時代)から海鹿島層、君ヶ浜層、犬吠埼層、酉明浦層、長崎鼻層に区分されます。今回発見された耳石は、銚子層群君ヶ浜層より産出し、その地質時代はバレミアン期にあたります。
(注2)耳石
耳石は脊椎動物の内耳にある炭酸カルシウムの構成物で、硬骨魚類の場合、礫石、扁平石からなります。一般的にコイ科などを除いて扁平石が大きく、種同定の際に重要になることがあるため、耳石は特に断りのない限り扁平石のことを指します。
(注3)微化石を探す手法
有孔虫や放散虫などの微化石(ミリサイズからミクロンサイズの化石)を抽出する際はナフサ(石油製品の一種)や酸を使うなどいくつかの方法がありますが、本研究ではボロン法が用いられました。ボロン法は、泥質岩に含まれる雲母鉱物からカリウムイオンを分離し、ナトリウムイオンや水に補わせることによって粘土鉱物化させ、自然界で起こる風化現象を急速に人工的に引き起します。この処理により、岩石を軟泥化させ、水洗い処理だけで微化石を取り出すことが可能となる方法です。
研究内容の詳細
世界初!白亜紀バレミアン期の地層から海水魚類の耳石化石を発見!~千葉の大地から探る恐竜時代の魚類化石~[PDF, 1MB]
論文情報
論文名
The first record of Lower Cretaceous otoliths from the Kimigahama Formation (Barremian) of the Choshi Group, Chiba Prefecture, Japan
(日本語訳)千葉県の銚子層群君ヶ浜層(バレミアン期)から産出した下部白亜系の耳石化石の初記録
著者
Shinya Miyata, Shinji Isaji, Kenji Kashiwagi, and Hidehiko Asai
宮田真也(城西大学),伊左治鎭司(千葉県立中央博物館),柏木健司(富山大学),浅井秀彦(千葉県山武地域振興事務所)
掲載誌
Palaeontologia Electronica
※Palaeontologia Electronica は,古生物学の査読付きの電子ジャーナルの中で最も古くからある雑誌で、Palaeontological Association, the Paleontological Societyおよび Society of Vertebrate Paleontologyによって後援されています。