紙vsデジタル学習:ディープラーニング(深い学び)は紙が良い デジタルは覚えにくい、集中しにくい、眼に負担 医学?薬学?看護学生調査
ポイント
- コロナ禍で授業形態が紙学習からデジタル学習が中心となる中で、2022年4月に大学生に対して紙とデジタル機器での学習効果を比較した。
- 4つの評価指標(「わかりやすさ」、「記憶」、「集中」、「眼の疲労」)について、紙学習とデジタル学習の良し悪しを3段階で評価した。
- 学習内容の「わかりやすさ」に関しては“紙が良い”、“デジタルが良い”の割合は同程度であった。「記憶」、「集中」に関しては大多数の学生が紙を評価し、デジタルを評価する学生は6%のみであった。「眼の疲労」に関してはほぼ全員がデジタルで悪いと回答していた。
- デジタルでの学習時間が長い学生においても、「記憶」、「集中」、「眼の疲労」については紙が良いと大多数が回答していた。
- 「記憶」や「集中」が必要な学習には、紙学習が好ましいと考えられた。
概要
富山大学学術研究部医学系 疫学健康政策学講座の山田正明准教授、関根道和教授らはコロナ禍で授業形態が大きくデジタル化した中、大学生に対してデジタル機器での学習効果について調査を行い、その結果が英国医師会雑誌に掲載されました。
富山大学においても全国と同様、デジタル機器を用いたICT授業が2020年度から開始されています。今回の調査は2022年4~5月に医学科学生とともに医学生、薬学生、看護学生を対象に、紙学習とデジタル学習での学習効果をオンラインで調査しました。
調査内容は学習効果を3つの指標(「わかりやすさ」、「記憶」、「集中」)について、紙学習とデジタル学習のどちらが良いかを3段階(①紙が良い、②同等、③デジタルが良い)で評価しました。また、「眼の疲労」について、3段階(①紙で悪い、②同等、③デジタルで悪い)で評価しました。
また、デジタル機器を用いた普段の学習時間が長い学生(2時間以上や4時間以上の群)はデジタル学習の評価が高いかどうかをトレンドテスト(注1)、ロジスティック回帰分析(注2)を用いて分析しました。
用語解説
(注1)トレンドテスト
3 群以上の群間比較を行う。隣の群との増減の傾向を検定する。(例:デジタル機器の使用時間が多い群では、デジタルでの学習効果を評価する率が高く、正のトレンドがある
→使っている人ほど評価が高い)
(注2)ロジスティック回帰分析
目的変数が0 と1 からなる2 値のデータについて、説明変数を使った式で表す統計手法。
ここではデジタル学習が良いと評価する人を目的変数(=1)とし、普段の学習時間を説明変数として分析している。学習時間が2 時間未満を参考値(reference)として、オッズ比が有意に高いか?(デジタル学習がよいと評価することと学習時間に関連があるか?)を見ている。
研究内容の詳細
紙vsデジタル学習:ディープラーニング(深い学び)は紙が良い デジタルは覚えにくい、集中しにくい、眼に負担 医学?薬学?看護学生調査[PDF, 557KB]
論文情報
論文名
Paper-based vs. digital-based learning among undergraduate medical, nursing, and pharmaceutical students in Japan: A cross-sectional study
著者
Yamada M, Sekine M, Tatsuse T.
掲載誌
BMJ Open(2024年5月27日オンライン出版)
DOI
http://dx.doi.org/10.1136/bmjopen-2023-083344
お問い合わせ
富山大学学術研究部医学系 健康政策学講座
准教授 山田正明
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