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有機硫黄酸化物を捕まえると強く光る分子の開発に成功-酸化変性タンパク質やアミノ酸の微量分析法への応用に期待-

研究のポイント

  • 生体内の酸化環境で発生しうるスルフィン酸(注1)は、疾患との関連の可能性などから注目され始めているが、その分子を効果的に捕まえ、検出?分析する方法はいまだ発展途上であった。
  • 発光性分子と直接連結させたアゾ基(注2)をスルフィン酸の捕捉原子団として利用したところ、スルフィン酸との付加反応によって得られた化合物だけが、非常に強い蛍光発光性を示すことを明らかにした。
  • 今後、酸化によってスルフィン酸化されたアミノ酸類やタンパク質への適用による、微量成分の検出?分析への応用が期待される。

概要

富山大学(学長:齋藤滋)学術研究部薬学?和漢系(生体認識化学研究室)の谷本裕樹准教授らの研究グループは、有機硫黄酸化物のスルフィン酸を捕捉し蛍光発光する分子を開発しました。スルフィン酸を捕まえた分子だけが非常に強い発光を示す本研究成果は、体内の酸化ストレスで損傷を受けるタンパク質などの検出や解析を通じた治療法の提案につながる基礎研究として、ライフサイエンスなどの分野での応用と発展が期待されます。

この研究成果は、2024年4月5日付けでWiley社の学術誌「Chemistry-An Asian Journal」にオンライン公開されました。

用語解説
  • (注1)スルフィン酸:分子式でSO2H と表される官能基(原子団)。チオール(SH)の硫黄原子(S)が酸化を受けるにしたがって、スルフェン酸(SOH)、スルフィン酸(SO2H)、スルホン酸(SO3H)へと変化する。チオールとスルフェン酸の間は生体内での酸化と還元の両方が起こり、両方を行き来することができるが、スルフィン酸まで酸化されると元に戻らないとされているため、疾患との関係が示唆されている。
  • (注2)アゾ基:窒素原子(N)二つが不飽和結合で連結した原子団(官能基)で、N2 もしくは N=N で表される。アゾ基の両方の窒素原子がベンゼン環で修飾されているものはアゾベンゼン色素としても知られている。

研究内容の詳細

有機硫黄酸化物を捕まえると強く光る分子の開発に成功-酸化変性タンパク質やアミノ酸の微量分析法への応用に期待-[PDF, 869KB]

論文情報

論文名

Synthesis of Naphthalimide Azocarboxylates Showing Turn-on Fluorescence by Substitution Reaction With Sulfinates

著者

谷本裕樹 (Hiroki Tanimoto)、京角祥吾 (Shogo Kyogaku)、大槻葵 (Aoi Otsuki)、友廣岳則 (Takenori Tomohiro)

掲載誌

Chemistry-An Asian Journal

DOI

https://doi.org/10.1002/asia.202400145

お問い合わせ

富山大学学術研究部薬学?和漢系 生体認識化学研究室 准教授 谷本裕樹
TEL:076-434-7518(直通)
Mail:
ウェブサイト:http://www.pha.u-toyama.ac.jp/research/laboratory/anachem/