富山湾に襲来する極端振幅波浪の強制メカニズムを解明~2008年寄り回り波に大気寒冷渦が影響~
発表のポイント
- 現代観測史上最大規模の2008年富山湾寄り回り波を駆動した大気擾乱場を詳細に解析。
- 2008年事例は、波浪の伝播に同調して日本海を南に拡がる海上風強制によって強化。
- 日本上空対流圏中上層での切離寒冷渦が、海上風強制域の南への広がりと持続に寄与。
概要
富山大学欧洲杯比分投注_欧洲杯足球网-官网平台地球システム科学科の田口文明教授と同大学院理工学教育部大学院生の野村尚平氏(研究当時、現?株式会社中部プラントサービス)、港湾空港技術研究所の田村仁上席研究官、東京大学先端科学技術研究センターの岡島悟助教らの研究グループは、日本海を通過する大気擾乱と、日本海から富山湾に伝播する海洋波浪のスペクトルの詳細な解析により、2008年に富山湾に大きな沿岸被害をもたらした近年最大規模の寄り回り波の生成メカニズムを明らかにしました。
富山湾周辺の沿岸地域は、数年に一度、寄り回り波と呼ばれる普段よりも格段に波高が高い海洋波浪による沿岸災害に見舞われてきました。その中でも、2008年に富山湾を襲った波は、最も波高が高く破壊的な事例だったため、この2008年事例が、過去の同種の中規模な波浪事例と比較して、例外的に大きかった要因を調査しました。
日本海に強風をもたらした大気擾乱を低気圧中心の追跡データと照合しながら詳細に解析した結果、日本上空の対流圏中上層に切離寒冷低気圧を伴って日本海を通過した2つの連続した低気圧が、高波の発生に寄与していることが判明しました。
海洋波浪スペクトルの詳細な解析により、これらの低気圧が海上の強風域を南に拡大させながら、伝播する波にエネルギーを与え続けたことにより波のエネルギーが増幅されていたことをはじめて発見しました。
この研究によって解明された、極端に振幅の大きな寄り回り波の駆動要因に関する知見は、同程度の規模の寄り回り波の発生頻度が将来どのように変化するかについての推定や沿岸防災にも役立つことが期待されます。
研究内容の詳細
富山湾に襲来する極端振幅波浪の強制メカニズムを解明~2008年寄り回り波に大気寒冷渦が影響~ [PDF, 2MB]
論文詳細
論文名
Forcing Mechanisms Associated with the Destructive Record-High 2008 Ocean Wave in Toyama Bay
著者
Shohei Nomura, Bunmei Taguchi(責任著者), Hitoshi Tamura, and Satoru Okajima
掲載誌
Earth and Space Science
本発表資料のお問い合わせ先
富山大学 学術研究部 都市デザイン学系 教授 田口 文明
- TEL:076-445-6663(直通)
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